5万石城下町として栄えた秋月。秋月氏、黒田氏の栄華がひっそりと眠る城下町だ。ここは約800年の様々な歴史と悲話を秘め、町並みは、武家屋敷や土塀、苔むした石垣、格子つづきと、まさに「筑前の小京都」といえる。今も古に逢える静けさで、水ぬるむ季節に、春の桜を散策しながら楽しむのはいかがだろう。

4月4日は地元の人々が集う「秋月さくら祭が行われる。秋月城下にある「杉の馬場」。秋月黒田藩時代、杉の大木が密生し、藩士達がここで馬揃えや調馬をしていたことからその名が付いた。ここでの桜のトンネルくぐりは、周りのロケーションがいい事もあり味わい深い。

秋月城は初代藩主となった長興（ながおき）が居館として整備したもの。古処山を背に、野鳥川を外堀とする陣屋形式の城郭で、築城にあたっては秋月氏の古処山城の資材を転用したと伝えられている。現在、表御殿後は秋月中学校、奥御殿後は梅園公園になっており、大手門であった長屋門は共に県指定有形として残っている。県外の人は、ひっそりとした静かなこの町に宿泊し、時計をはずして旅する場所に充てられたらどうだろう。

江戸末期から温泉郷として栄え、185年の歴史ある温泉「船子屋温泉郷」は、矢部川を挟んで船子屋温泉と新船子屋温泉からなる。船子屋鉱泉井戸は文政7年（1824年）に掘られ、陸軍の転地療養所に指定され、傷の治りが早い温泉として知られていた。

飛んでいるスズメが炭酸ガスで落ちたという言い伝えがあるほどで、「雀地獄」とも呼ばれるほどの鉱泉。船子屋温泉郷の中心部に位置するレトロ調の建物が船子屋鉱泉湯で、豊富な炭酸水は鉄分が多いことも特徴のひとつ。県外から大勢の人たちがこの鉱泉をくみに訪れる。

矢部川沿いに位置するのが中ノ島公園。自然に溶け込んだ多彩な遊戯施設や運動公園などがあり、春となれば花見の名所に早変わり。河川では水遊びを楽しむ子どもたちの笑顔で溢れる。また、矢部川の清流が育んだ川の幸をはじめ、野菜やフルーツなどに恵まれ、水と緑に囲まれた船子屋は自然の食材の宝庫。アユ料理やモズクガニ、船子屋牛や船小屋豚など、自然の恵みいっぱいのグルメも楽しめる。