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楽天トラベルトップ > FINDING JAPAN & ME ココロが動く、を探しに行こう > #14 今、忘れかけていた暮らしが、そこにありました。

FINDING JAPAN & ME  ココロが動く、を探しに行こう

透き通った水や、ゆれる緑の中に立ったとき、人はやさしい気持ちになれる。
とうとうと町の中心を流れる吉田川の恵みを受け、どの通りの脇にも水路のせせらぎが満ちる岐阜県郡上八幡は、人と自然の間に隔たりのない町。
ずっと昔から変わることなく、自然との暮らしを守り続けてきたこの町へ、忘れかけていた景色を探しに旅立ちませんか。

photo by Takaaki Koshiba , realization & text by Rika Hiro

#14 今、忘れかけていた暮らしが、そこにありました。水と生きる町・岐阜県郡上八幡で、自然と融け合う旅へ

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水と共に生きる町、岐阜県郡上八幡。人と自然の間に隔たりを感じない、この地を訪れると、忘れかけていた景色が胸にこみ上げます。現代の暮らしで見失いがちな、大切な気持ちを思い出す旅へ出かけませんか。

東京から新幹線、JR特急ワイドビューひだ、長良川鉄道にゆられて約4時間。岐阜県郡上市八幡町、通称「郡上八幡」に到着。城下町で栄えた頃の古い町並みが残り、どこの通りのわきにも水路が流れ、せせらぎが聴こえてきます。

町の中心をとうとうと流れる吉田川は、遠くからでも川底がはっきりと見える透明度。真夏の日差しの暑さを忘れさせてくれる景色に、自然と多くの人が集まります。

最初に訪れたのは、創業430年、岐阜県重要無形文化財にも指定された郡上本染(藍染め)の「渡辺染物店」。のれんの深い青がその歴史を物語ります。

店内で発酵させた藍に白い布を浸すと、最初は茶色がかった布の色が、空気に触れ酸化することで徐々に緑色に。さらに、それを店の前を流れる水路に浸すことで、目が覚めるほど鮮やかな青色に。

十四代目の渡辺庄吉さんは、藍染めはもちろん、鮎や鯉などの絵柄も描く名人。普段は染物それぞれにまつわる歴史や思い出を語ってくれる気さくな方ですが、藍染めの最中は表情が一変。緊張感ただようプロの職人の空気に圧倒されます。

自然の藍染めは、鯉の朱色ひとつを見ても、裏から藍色がうっすらと滲みでた、市販のものでは表現できない色合いを含んでいます。「この技術を受け継いでいきたい」と語る渡辺さん。その顔は笑顔に包まれていました。

渡辺染物店を後にし、町を散策していると、通りの酒屋さんに渡辺庄吉さんの描いた鯉のラベルの地酒が。その隣には「郡上踊」の文字の地酒も。郡上の魅力を多くの人に知ってもらうために、町おこしの一環としてつくられたそうです。

郡上の名産品の一つ、南天を丸くした南天玉は、酒屋前に吊るされる杉玉を似せて作られたもの。南天は「難を転じる」といういわれもあり、郡上では多くの店の入り口に南天玉が吊るされています。

日中になり気温も高くなった頃、吉田川では地元の人々や観光客の人々が、大人も子どもも分け隔てなく涼む姿が見られました。人と自然が一体となった景色に、どこか懐かしさを感じました。

日も暮れてお腹が空いたところで訪れたのは、郡上鮎や飛騨牛、奥美濃古地鶏(おくみのこぢどり)など、地元の食材にこだわった「郷土料理店 大八」。ご主人の手料理が味わえます。

吉田川で朝釣ったばかりの、天然の郡上鮎。秋になり子持ち鮎になる前の今の時期が、1番美味しいとのこと。天然の鮎は非常に貴重で、このくらい立派な鮎はなかなか無いそうです。

郡上鮎、郡上豆腐、郡上ハムなど、地元の食材で彩られた料理の数々は、ご主人の郡上八幡への愛を感じる優しい味でした。秋はアメジドジョウ、冬はしし鍋など、季節が移ろうごとに旬の料理を楽しめるそう。

お腹も満たされ、いよいよ日本三大盆踊りの一つとしても名高い「郡上おどり」へ。夕闇に包まれた吉田川には、地元の組合の人々が置いたかがり火が揺れています。息を呑むような幻想的な景色に、郡上おどりへの高揚が増します。

郡上おどり前に訪れたのは、ゆかたのレンタルができる石山呉服店。反物から手縫いで仕上げた高級なゆかたを70〜80枚取り揃えており、「一夜限りなので冒険して欲しい」と、お客さんそれぞれに合うゆかたをオーナーが選んでくれます。

ゆかたの着方を丁寧に説明しながら着付けてくれるので、女子にとっては耳寄りな情報がたくさん。「ゆかたは着物の入り口なので、若い人にもっとゆかたを着て欲しい。特に郡上おどりはゆかたで踊ることで楽しさが倍増します」とオーナー。その思いからゆかたのレンタルを始めたそうです。

すっかり装いも夏らしくなり、いざ郡上おどりの会場へ。33夜にわたって踊り続けられる郡上おどりの会場へと続く道中に、大きな提灯が揺れています。

「盆の4日間は身分の隔てなく無礼講で踊るがよい。」江戸時代の城主の一言から、400年もの間踊り続けられている郡上おどり。この日の会場、八幡神社に到着。歴史に思いを馳せながら、下駄の音が響く会場の中へ。

神社の境内では、地元の人も観光客の人も分け隔てなく、多くの人が「かわさき」や「猫の子」に代表される歌と演奏に合わせて踊っています。見よう見まねで踊り始めた私たちも、気づけば時間を忘れて踊りに没頭し、「見るおどり」ではなく「踊るおどり」といわれる郡上おどりの魅力を堪能しました。

この旅で宿泊したホテル郡上八幡は、その名のとおり、郡上おどりの会場に近い便利な立地。7種あるお風呂のうち、露天風呂から見渡す吉田川の景色は絶景で、郡上おどりの汗を流し、ゆっくりとくつろぐことが出来ました。

翌朝、向かったのは日本最古の木造再建城といわれる郡上八幡城。初代郡上八幡城主遠藤盛数の長女として生まれた「お千代」は、時の武将・山内一豊の妻として有名で、お千代にまつわる商品が郡上八幡には多く見られました。

郡上八幡城から眺める町並みは、大きな魚の形に見えるそう。水の町ならではの景色と、爽やかな風に心が洗われました。

次に訪れたのは、明治20年創業の老舗飴屋の「桜間見屋」。店頭ののれんは渡辺染物店で染められた特注品。右から「肉桂玉(ニッケイダマ)」と読んで、通称ニッキ飴と呼ばれる桜間見屋の飴は、郡上八幡の人ならば誰もが知る名産品。

桜間見屋の肉桂玉は、飴を丸くする工程以外はすべて手作業でつくられます。砂糖の結晶が大きいほど甘さにくどさが出ないため、グラニュー糖ではなく「ざらめ」を使用し、それが長く愛される秘訣とのこと。黒肉桂に使用する黒糖は沖縄産にこだわるなど、昔から変わらない材料と製法を守ることで、今後も伝統の味を伝えていきたいという思いが伝わってきました。

吉田川の新橋近くを散策中に見つけたのは、民家の間に用水が流れる「いがわこみち」。昔から人々の生活水として親しまれて来た「いがわこみち」は、今でも洗濯物の濯ぎや野菜を洗う際に使われているそう。

「いがわこみち」には、鯉をはじめとする川魚が多く泳いでおり、周辺の人々が有志で世話をしているとのこと。子どもたちが鯉のえさやりを楽しんでいました。

郡上八幡は、全国の食品サンプルシェアの多くを占めると言われており、本物そっくりのストラップやマグネットが並ぶ「さんぷる工房」の店内は、家族で大賑わい。

商品価格のみで、サンプル体験も可能(体験料無料)。フルーツタルトのサンプル作りに挑戦し、クリームをキレイに絞るのに苦戦。コツを掴めば簡単だそう。後日郵送ではなく、その場で持って帰れるのが嬉しい。

こちらは、サンプルではなく本物のスイーツ。郡上八幡旧庁舎記念館前にある洋菓子店「中庄」の清流のしずくは、郡上の天然水をふんだんに使用したゼリーで、周りをコーティングしているゴムを爪楊枝でぷちんと割って、蜜をかけて食べます。目にも口にも涼しく、夏場にぴったり。 ※GW〜9月までの期間限定

祖父の代から続く店を継いだ店長さんは、生まれも育ちも郡上八幡。郡上を連想するお菓子を作りたいと、試行錯誤の末に完成させたのが「清流のしずく」とのこと。その他のお菓子にも地元の食材を多く使用するなど、郡上八幡への愛情と、その魅力を伝えたいという想いが強く感じられました。

全国名水百選の第1号として名高い湧き水、宗祇水(そうぎすい)も、郡上八幡が水の町と呼ばれる由縁の1つ。室町時代の連歌師、宗祇が領主東常緑(とうのつねより)に古今伝授を受けた場所とされ、宗祇水の名が付いたそう。1番上が飲料水、中間が米や野菜等の洗場、1番下が桶などのさらし場と、流れが段になっています。冷たすぎないまろやかな口どけで、何杯もいただきました。

宗祇水のすぐ横では、吉田川と小駄良川が合流しています。古い民家が連なる川沿いはやはり人々で賑わい、大人も子どもも関係なく、たくさんの笑顔に満ちていました。

古い木造建ての郡上八幡駅。普段1両しかないという「長良川鉄道ゆらーり眺めて清流列車」に乗り、名残惜しくも東京へ。約1時間半の乗車時間を忘れさせる、美しい車窓風景が最後まで旅人の心を癒します。

水と共に生きる町、郡上八幡。歩いて回ることの出来る小さなこの町の中には、失いたくない大切な景色がたくさんありました。皆さんも、普段の生活の中で、知らずと忘れかけていた何かを見つける旅に、出てみませんか。

今回訪れた場所
  【岐阜県郡上市】
渡辺染物店
住所:岐阜県郡上市八幡町島谷737
    【岐阜県郡上市】
郷土料理 大八
住所:岐阜県郡上市八幡町肴町883-1
    【岐阜県郡上市】
石山呉服店
住所:岐阜県郡上市八幡町島谷828
 
  【岐阜県郡上市】
ホテル郡上八幡
住所:岐阜県郡上市八幡町吉野208
    【岐阜県郡上市】
郡上八幡城
住所:岐阜県郡上市八幡町柳町一の平
    【岐阜県郡上市】
桜間見屋
住所:岐阜県郡上市八幡町本町862
 
  【岐阜県郡上市】
いがわこみち
住所:岐阜県郡上市八幡町島谷
    【岐阜県郡上市】
中庄
住所:岐阜県郡上市八幡町島谷541
    【岐阜県郡上市】
さんぷる工房
住所:岐阜県郡上市八幡町橋本町956