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楽天トラベルトップ > FINDING JAPAN & ME ココロが動く、を探しに行こう > #39 日本酒の聖地で、心に染みる地酒巡りの旅へ

FINDING JAPAN & ME  ココロが動く、を探しに行こう

深い山々に隠された、古き懐かしい景色の残る飛騨の土地には、
木のぬくもりにあふれる伝統工芸や、建築技術が今も息づき、
きれいな山水が育むおいしい地酒の名蔵元が軒を連ねています。
やさしい時間が流れる“日本酒の聖地”で、心酔いしれる旅へ。

photo by Kazue Sato , realization & text by Rika Hiro

★ #39 時代が置き去りにした“ぬくもり”を探しに。古き日本酒の聖地で、心に染みる地酒巡りの旅へ。

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深い山々に隠された、古き懐かしい景色の残る飛騨の土地には、木のぬくもりにあふれる伝統工芸や、建築技術が今も息づき、きれいな山水が育むおいしい地酒の名蔵元が軒を連ねています。やさしい時間が流れる“日本酒の聖地”で、心酔いしれる旅へ。

東京から約4時間半。襞(ひだ)のように重なる山々の奥にたたずむ町、飛騨古川にやって来ました。趣のある町中には白壁土蔵が連なり、その袂にはかつて用水として使われていた瀬戸川が流れ、情緒豊かな景観は城下町飛騨古川の顔となっています。どこか懐かしさを覚えるその町並みは、訪れた人の心を和ませます。

古い町並み沿いには、この地特有の伝統的建築の商家や民家が連なっています。家の軒下には「雲」と呼ばれる装飾が施され、その家を建てた大工によって紋様が違うのだそう。様々な形状の「雲」が見受けられるため、違いを楽しみながら町並み散策が出来ます。

古い町並みに酒蔵を構える、明治3年創業の老舗「蓬莱・渡辺酒造店」を訪れました。製造後、すぐに売り切れてしまうことから“幻の酒”といわれる「蔵元の隠し酒」は、全国酒類コンクールでグランプリに輝き続ける名酒です。

蔵人が直接案内をする酒蔵見学では、天候や気温などで品質が左右される繊細な酒造現場を見学できます。熟練した杜氏(とうじ)が自らの知識と五感を駆使し、日々丁寧に日本酒と向き合っています。

こちらは、加水・熟成前の“しぼりたての新酒”。アルコール度数約20度のピリピリとした舌触りがくせになるお酒で、この日は特別に試飲させていただきました。酒蔵見学ならではの貴重な体験です。

蔵人になって8年目のコディーさんは、手造りの日本酒の味わいに魅了された一人。機械での大量生産が主流の現代で、手間暇のかかる伝統的酒造を続けている渡辺酒造店には、日本酒と日々真剣に向き合う職人たちの姿がありました。

昼食に訪れたのは、飛騨古川の清らかな水と、地元流葉産そば粉を100%使用した手打ちそばが味わえる「福善寺そば」。店内からガラス越しに本格的なそば打ちの様子を見学できます。

そば本来の味わいに絶対の自信を持つ福善寺そばでは、盛り蕎麦(冷)はまず薬味を何もつけずに味わい、次に塩とわさびで、最後につゆにくぐらせて味わうのがおすすめだそう。地酒をかけて食すという粋な楽しみ方もあるのだとか。

冬は熱々の「掛け蕎麦(温)」もおすすめ。濃厚な出し汁と、甘味とコシのあるそばの味わいに、心の底から満足できます。

この日宿泊したのは、趣深い飛騨建築の魅力がつまった、創業約160年の老舗旅館「料亭旅館 八ツ三館」。国の有形文化財に指定される「招月楼」の旧玄関にあたるロビーは、吹き抜けの高い天井の下、贅沢な調度品に囲まれて心くつろげる空間です。あたたかな囲炉裏の火と、やさしい木のぬくもりに外の寒さを忘れます。

夕食は、寒い季節に食べたい「飛騨牛すき焼き鍋」。ぐつぐつと香ばしく煮立つ“わりした”の中で、高級部位を厳選した地元飛騨牛肉に味が染み込んでいく様は、目にもおいしく食欲をそそります。

お鍋のお共に「地酒の利き酒セット」を注文。今日訪れた渡辺酒造店をふくむ古川の蔵元を中心に、計5種の地酒・美酒を飲み比べできます。12月〜1月は新酒が続々と登場するとのこと。ほろ酔いの心地良さの中、静かに飛騨古川の夜がふけていきました。

翌日、開放的な屋根付庭園露天風呂で、眠気覚ましに朝風呂を満喫。飛騨古川で源泉100%の温泉を楽しめる場所はわずかで、料亭旅館 八ツ三館ならではの贅沢な時間を過ごすことができました。

飛騨古川から電車で約15分。同じく古い町並みが今も残る飛騨高山を訪れました。通り沿いに見つけた一際立派な杉玉は、元祖辛口酒として名高い“鬼ころし”の蔵元、老田酒造店のもの。飛騨の厳しい寒さは酒造工程で酵母の発酵を抑えるため、比較的辛口の日本酒に仕上がるのが特徴だそう。

“鬼ころし”の名前の由来を老田酒造店の奥さんに訪ねたところ、「鬼を殺すほど辛いとか、鬼も酔いつぶれるほど美味いとか色々説はあるけれど、うちの鬼ころしは、飲んだ人の“心の鬼”を殺して幸せになって欲しいという願いでつくっています」と語ってくれました。

老田酒造店のある古い町並みを後に、しばらく歩いていると、飛騨の伝統工芸品“飛騨春慶(ひだしゅんけい)”の販売・展示を行う「飛騨高山春慶会館」に到着しました。愛らしい看板犬がお出迎え。

透明度の高い“透漆(すきうるし)”を使用し、天然の木目の美しさを最大限に活かすのが飛騨春慶の特長。伝統的な手法を守りつつ、ワイングラスなどの現代に合わせた新しい春慶も作られています。

飛騨高山春慶会館では、飛騨春慶の“絵付け”が体験できます。墨をふくませた筆で、ペン皿や絵馬に好きな絵柄を描きます。絵付け終わった作品には透漆が塗られ、約2ヶ月程度で仕上げて郵送してくれるとのこと。飛騨の旅の思い出がつまった、世界に一つのお土産が完成。

次に訪れたのは、自家製の飛騨コシヒカリを使った“みたらし団子”が人気の「福太郎」。近くに自家農園を持ち、育てた野菜や、その他地元農産物の加工品販売も行っています。

飛騨のみたらし団子には砂糖をほとんど使わないそうで、しょうゆだれのみの香ばしい味わい。地元醤油を2種ブレンドした特性だれに、団子を3回に分けてくぐらせしっかりと味付けし、じっくりと焼き上げます。

飛騨の郷土料理“五平餅”も人気商品の1つ。粒感を残した米粉と、シソ科のエゴマを使った香り高いたれの相性は抜群。どこか昔懐かしく、やさしい味わいに、お腹も心も満たされました。

飛騨高山から電車で約50分。この旅最後に訪れたのは、下呂温泉にほど近い飛騨萩原(ひだはぎわら)の地。町には明治時代の土蔵造の古い建物が残っており、写真の「十六館」は当時銀行として建てられ、今も保存されています。

十六館の斜め向かい側に佇む「甘味処かつぶん」は、地元の人が途切れなく訪れる人気の和菓子屋さん。店内の仕込み場では、ご主人が1つ1つ手造りで和菓子をこしらえています。

人気の「おすわさま最中」は、飛騨萩原の村を救ったと言い伝えられる獅子の顔をかたどった最中。甘さ控えめのあんこの中に大きなお餅が入っており、中身を詰めてから1晩なじませた皮がしっとりと口当たり良く、食べごたえ満点です。

11〜3月の冬の期間は、香り高いゆずあんを使用した「ひとなり」最中も楽しめます。創業時から地元の人々に愛され約50年、今も手造りの美味しい和菓子を提供し続ける「甘味処かつぶん」で、ぜひ飛騨の旅土産を探してみてください。

この旅最後に訪れたのは、300年以上の歴史を誇る飛騨萩原の老舗蔵元「天領(てんりょう)酒造」。「天領」「飛切り」など、飛騨を代表する名酒を数多く生んでいます。

天領酒造では、「ひだほまれ」という飛騨産の酒造好適米を100%使用しています。通常の米より“でんぷん”が多く含まれるため、雑味がなく味に旨みが出やすいのだそう。その年に収穫された米の状態に応じて仕込みをするため、全て手間暇のかかる自家精米にこだわっています。

飲むと甘みを感じる飛騨の“超軟水”を使った日本酒は、辛口にも関わらずほのかな甘みが口に広がり、後味がすっきりと飲みやすいのが魅力。地産地消をかかげ、飛騨の米・水から名酒を生み出すそのこだわりの製法には、地元の自然への愛情があらわれていました。

旅の終わりに、飛騨古川駅で袴姿の萩原町商工会の人々がお見送りしてくれました。飛騨のおいしい地酒と、伝統や歴史の残るなつかしい景色をめぐった今回の旅。寒い冬、心にあたたかなぬくもりをくれる飛騨の地へ訪れてみませんか。

今回訪れた場所
  【岐阜県飛騨市】
蓬莱・渡辺酒造店
住所:岐阜県飛騨市古川町壱之町7-7
    【岐阜県飛騨市】
福善寺そば
住所:岐阜県飛騨市古川町壱之町10-1
    【岐阜県飛騨市】
料亭旅館 八ツ三館
住所:岐阜県飛騨市古川町向町1丁目8-27
 
  【岐阜県高山市】
老田酒造店
住所:岐阜県高山市上三之町67
    【岐阜県高山市】
飛騨高山春慶会館
住所:岐阜県高山市神田町1-88
    【岐阜県高山市】
福太郎
住所:岐阜県高山市下三之町58
 
  【岐阜県下呂市】
十六館
住所:岐阜県下呂市萩原町萩原1359-1
    【岐阜県下呂市】
甘味処かつぶん
住所:岐阜県下呂市萩原町萩原1282-11
    【岐阜県下呂市】
天領酒造
住所:岐阜県下呂市萩原町萩原1289-1