日本が近代国家としての産声を上げようとしていた慶応元年（一八六五）。宮崎県児湯郡上江村（現・高鍋町）にひとりの男の子が生を受けた。

石井十次。岡山医学校（現・岡山大学医学部の前身）に通っていた二〇才のとき、幼い息子・娘をつれ、遍路の身なりで物乞いをしていた極貧の女性からひとりの男の子を預かったのをきっかけに、やがて「孤児救済」を自らの天命と決意し、国による「社会福祉」の思想も、またそれを実現する経済的背景も持たなかった日本において人々の協力を得ながら、数千人の子どもに家と、食事と、自立のための教育を与えた。

彼を支えたのは親友・大原孫三郎。倉敷紡績（現クラボウ）の社長にして大原美術館の創設者だ。十次の理念に共感し、物心両面で彼を支える、一蓮托生の“親友”となる。

また、十次と孫三郎の信念を後世へ伝える役割を果たすのは、後に大家として名を残す画家・児島虎次郎。3人の男たちの友情が、日本の社会制度を大きく変えていくのだ。

「児童福祉の父」として明治の世を疾走する十次と、その風の中に巻き込まれ、ともに人生を翻弄される友人や家族の物語とともに、現代にも通じる“人と人との善意の輪”を読み解いてみたい。

２００８年に度数３０％以下のアルコール類の関税を完全撤廃した香港。これを受け、いよいよニューヨーク、ロンドンに並ぶ“ワインのハブ”がアジアにも生まれようとしている。

「飲む」ためではなく「投資目的」のワインが注目を集めるようになった香港では世界有数のワインオークションが数多く開催されるようになり、落札したものを保管するためだけの会員制のセラーも充実。

弾薬庫をセラーに改装する等、面白いセラーの姿が見られるのもメルティングスポット・香港ならではだ。一方で、中国料理とワインのマリアージュを試みる料理人も増え、上海蟹と赤ワイン等新たな組み合わせが注目を集めている。

一皿ごとに全て異なるグラスワインを提案するコースが人気のお店から、最新調理法・モラキュラーガストロノミーを提唱する「アジアのエルブジ」まで、最新香港グルメ事情を一挙ご紹介だ。

世界各国から1000人以上の報道陣が訪れたという１０月末に行われた一大イベント「香港ワイン＆ダインフェスティバル」のリポートやアジア料理とワインの組み合わせ方講座の様子も交え、新しい香港の魅力をたっぷりとお届けしよう。